全損タイプ・半損タイプとは?
法人保険は主に以下のタイプがあります。
- 全損タイプ(100%損金タイプ)
- 半損タイプ(1/2損金タイプ)
- 1/3損金タイプ
- 1/4損金タイプ
- 全額資産計上(一切損金にできない)
これらの違いは、支払った保険料を損金に算入できる割合です。
加入時のことだけを考えれば全損タイプの方が有利ですが、それぞれのタイプによって解約返戻金を受け取る時の益金算入のルールが変わってきます。
また、損金に計上できる金額が低い保険の方が、解約返戻率が高くて貯蓄性に優れた保険商品が多いです。
法人保険に加入する時は、全損タイプだけで絞り込んで選ぶのではなく、まずは損金にタイプを気にせずに保障内容や解約返戻率のバランスが良い保険商品を探すようにしてください。
そして、損金タイプに応じて解約返戻金の益金に対する出口戦略をしっかり立てておくことが大切です。
各商品の違い
全損や半損などのタイプは保険会社や加入者が裁量で決めるものではなく、法律によって経費処理をするルールが定められています。
主なタイプ別の保険種類をまとめました。
全損タイプ
生活障害定期保険
35才までの逓増定期保険
半損タイプ(1/2損金タイプ)
逓増定期保険
長期平準定期保険
がん保険
養老保険
1/3損金タイプ
逓増定期保険
1/4損金タイプ
逓増定期保険
長期傷害保険
全額資産計上
終身保険
全体の傾向としては、保険金の支払いリスクが少なくて中途解約しない限り、死亡保険金を受け取っても解約返戻金を受け取っても加入者が損をしない保険になるほど損金計上の割合が低くなります。
全損タイプの場合は、保険金が支払われるリスクが低くて解約返戻率が低い定期保険になるため、実質的な保険料の負担が大きくなります。
益金の計上
解約返戻金を益金として計上する金額は、保険料払込時のタイプに応じて割合が変わります。
計算式は「解約返戻金額-保険料総額×(1-損金割合)」になり、全損タイプは解約返戻金を全額益金で計上しないといけません。
一例として1,000万円の保険料を支払い、解約返戻率90%で900万円の返戻金を受け取った場合の益金計上の違いをご覧ください。
- 全損タイプ → 900万円全額が益金
- 1/2損金タイプ → 400万円(900万円-1,000万円×1/2→900万円-500万円)
- 1/3損金タイプ → 223万円(900万円-1,000万円×2/3→900万円-667万円)
- 1/4損金タイプ → 150万円(900万円-1,000万円×3/4→900万円-750万円)
ご覧の通り、損金割合と比例して益金で計上する割合が低くなっていきます。
税制面だけを見た場合、解約返戻金を受け取る時期に決算の利益を少なくできるのであれば、損金割合が高い方が有利です。
解約返戻金を益金として計上するのであれば、長期的に見て課税対象になる金額に大きな違いは出ませんが、こちらも解約返戻率が高いほど損金割合が高い方が有利です。
利益を計上する決算期の総利益や各種税制の優遇に応じて、課税対象額に対する税率が変わることがあります。
損金タイプを上手に使い分ける
損金タイプの違いによって、保険料払込時期と解約返戻金を受け取る時期の経費処理や決算上の申告利益が大きく変わってきます。
法人保険を節税で活用する場合、若い役員に全損タイプの保険をかけて、高齢の経営者や役員の退職金を準備するなど幅広い活用術があります。
ただし、このケースならこの損金タイプといった明確な決まりはなく、解約返金を受け取るタイミングでの出口戦略と解約返戻率によって最適なプランが変わってきます。
まずは保険加入時と解約返戻金受取時のどちらに重点を置くのかを考え、さらに総合的な税負担と解約返戻率・保障を受けられる恩恵などのバランスを考慮して法人保険のプラン選定をしましょう。